第4章 導きの星は誰を照らす
幼い頃の記憶がよみがえる。行儀見習いが終わってようやく執事見習いとしてお城に正式に務める事になった頃
母の容態が安定し元気になってきていた時だ。
「ははさまは、元気になったらどこに行きたい??」
「ん?元気になったらかぁ。ルプスはどうしたい??」
「おとーさんのところ!!!」「えっ!?」
驚いた顔をする母、
「村の人達言ってたよ。おとーさんとおかーさんがいるから僕は生まれたんだよって」「そうね・・・。」
「ルプスは違うの??よそものだから??」
「ううん、私の愛しい宝物。貴方にもお父様はいるわとっても優しくて素敵な・・・会えばきっと大好きになる」「ははさまは?」「え?」「ははさまはおとーさんが好き?」
「・・・えぇ、だいすきよ」「元気になったら会いたい?」「そうねぇ・・・」「じゃあ、僕が大きくなったら連れてってあげるね」
「ありがとう、でも私はついて行けないの・・・」「どうして??」「ははさまは『森の花嫁』だから森から離れちゃいけないの」
古いお話だった。森の神様に見初められた女は願いをかなえる代わりに、白い髪と金色の眼をもらい森で一生を過ごすという。
唯のおとぎ話だと村の皆が言っていた。でも、ははさまは嘘をついたことは一度もない
「じゃあ、おとうさんも連れてきてあげるね」
「・・・・それはできないわ。」「どうして?」
「私は、もう会う資格がないから・・・。でもルプスはいつか、お父様の所に・・・」
そう言って母は森の中にのまれていく慌てて、追いかけようとするけど、僕は誰かに手を引かれて別の方へ連れて行かれる。
母はこちらから目を反らし森の方へ歩いていく。
まって、まって、まってよ!!僕はははさまの傍にいたい!!ははさまがいないのに・・・お父様の所に行けないよ。
お願い、行かないで!!やだ、ははさまといる!!
お願いおいてかないで!!!!
目を覚ますと母の寝台にねむっていた嫌な汗がでて寝巻が湿っている。
傍にはははさまがいない。空の薬の瓶がある。
夢のつづきかと思って母を探して家を飛び出した。