第4章 導きの星は誰を照らす
ははさまが倒れたと聞かされたのは、昨日の昼過ぎだった。
レグルスと丘に薬草を摘みに出かけて宿屋に戻ったら、ははさまはいなかった。
聞けば、薬の調合用の薬草を取りに中庭に出て、そのまま帰ってこなかったので見に行ったらすでに倒れていたらしい。
「すぐに、処置したから大丈夫だと思う。幸い頭は打たなかったみたいだし・・・今日は宿屋閉めておきましょう。」
『宿泊客はないみたいだし・・・』
家に戻って部屋にいくと青白い顔をした母が寝台に寝ていた。
「今日は、体調が良いからって、言ってたのに」
予約のお客様もいないから、今日は薬師様のお手伝いをするからそれまでレグルスたちと遊んでいて
「その言葉通り、朝の様子は変わりなかったよ・・。発作の間隔や兆候が以前とは違う気がする・・・。」
ははさまの発作は原因がわからない。薬師様は最初産後の肥立ちが悪かった所為かと思い、普段から出来るだけ休ませるもこうして体調のいい時に限って重い発作を起こすのだ。症状も年々多くなっている気もする・・・。
何か悪い病気なのかと検診するも異常は見られない。
「一度、王都に連れて行くべきだと思うけれど・・・」
「ダメ!!ははさま王都行くのとっても嫌がっていた。」
以前は、国王の薦めもあって王妃付のメイドをしていた。
丁度、僕が執事見習いをする前、行儀習いに来ていた時だ。
その頃は、薬師様も宮中お抱えの薬学師をしていたので村にいるより治療や検診がしやすかったのも理由の一つだったが、
ある日を境にメイドを辞め村に戻ることになったのだ。以来王都に踏み入れる事はほとんどない。
「だが、ここの設備ではどうしたって母御の病の原因もわからない・・・このままいけば、命を落とすかもしれない。」「・・・・やだ」
母が死ぬのは耐え難い、しかし、王都の国営の病院に入ってしまえば治療が終わるまでほぼ面会はできない。ただでさえ、これから先滅多に会いに行けなくなるのに。
「・・・・とにかく、今日一日はお前が様子を見ていろ」
そう言って薬師様は部屋を出た。母の手は氷のように冷たいが寝息は落ち着いている。
微かに聞こえる母の鼓動に耳を傾けながら眠りへと落ちて行った。