第4章 導きの星は誰を照らす
「おまえ誰だ!なんでここにいる!!ははさまから離れろよ!!!」
朝の陽ざしを受けキラキラと輝く夜空の様な黒髪、こちらをにらむ目は青みを帯びた濃藍にも見える深い色。
幼き日の教え子とは違う少し感情的な年相応の態度に少し驚きつつも状況に戸惑いを覚えた。
「・・・・ルプス・・・・村のお客様に対して失礼でしょ」
「だって、朝起きたらははさま、いなく・・て、宿屋に、もいな、かったか、ら」
母御に叱られてばつが悪くなったのか、涙を浮かべながらも理由を述べる、そしてこちらをキッ!と睨んでいる。
「ごめんなさい。すこし外の空気を吸いたくて丘に登ったの、この方が絵を描く場所を探していたから案内しただけよ。」
「その途中で君のお母さまが具合を悪くされたみたいだから、村に運ぼうとしただけなんだよ」「ははさま・・・お薬は??」
母御の体調にようやく気付き、冷静さを取り戻した聡明な目はやはり似ている。
「よければ村まで運ぶよ」「必要ありません」
そういって腕に抱えていた婦人を引きはがした。
「母の体調を気遣っていただきありがとうございます。
優しい御心づかい痛み入りますが、どうぞ来た目的を果し、早々に村から出て行ってください。」
そう言って母御の体を小さな体が支えながら村の方へと丘を下っていく・・・・。
とても冷たい目をした感情の見えない悲しい顔の教え子を久方ぶりに見た気がする。
その後、キャンパスに絵を描こうと画材を広げたが、なかなか進まず、今日は早めに宿屋に戻ることにした。
時刻は昼、宿屋は昨日とは別に活気に満ちいる。
昨日知り合った御仁に声をかけられ同席する。そして絵の進み具合を話しながら朝の出来事を話す機会があり話すと
「おっ!早速、怖い方の騎士様に会ったんだな」「それでルプスさっき不機嫌だったのか!?」「根はいい子なんだが、母御の事になると感情的なっちまうんだ。許せよ」
「まっ!あれだけ美人な母ちゃんいたら心配にならぁ~」
「あいつは母御に近寄る余所者に厳しいからな」
「ついでに既婚者でははさまに言いよるイカレタおっさんも虫唾が走るほど嫌いです」
荒っぽい仕草で料理を置く、少年の声に聴き覚えがあり振り返ると、先程より若干不機嫌そうな顔の例の少年が立っていた。