第4章 導きの星は誰を照らす
宿屋は質素だが、手入れがよく行き届いて、飾られたドライフラワーのブーケも彩り良く、各部屋や廊下に飾られている。
常連も多いのか、客人への細やかな気遣いもしっかりしているのか、事情を聞いた宿泊客は、それぞれ食材を持ち寄って鍋料理を作り始める。スープや具沢山のシチューの様なこの料理、素朴な見た目と大雑把な調理法にも関わらずとても美味しかった。
『採れたての肉や魚が入ってるからな、その辺に生えてる雑草なら毒性はないから』途中から聞き流した。
食材を提供して無い身で頂いてしまったもののここの人達は良い人ばかりで気にするそぶりなく、しがない画家の旅先の出来事や絵に興味を示してくれた。
話が弾む中
「そうだ。あんた画家ならこの宿屋の為に何か絵を描いてやってくれないか?あそこに飾る様に」
指差した方には大きな壁に絨毯ほどあるタペストリーが飾られている。幾何学模様で美しくもあるが少し宿屋の雰囲気に溶け込めていない様子。
「この間、客人のコがちょっとしたオイタをして壁が崩れちまったんだ。」壁を決壊させる様な子供って一体?
「壁の修繕は終わってるんだが、ここだけ綺麗になってて、ミスマッチだからって仕方なく女将がタペストリー作ってかけたんだがどうにもなぁ~」タペストリーをめくると、ちょうど男性の胸下位の位置が真新しくなっていて大きさもM-12サイズのキャンパス一枚分程ある・・・・う~んますます不思議なんだけど・・・。
「いっそフォトグラフでも飾ればとも言ったんだが、ここの女将さん、撮るのも撮られるのもなんとなく嫌だ。って聞かなくて。」ふぉと・・・?なんだろ?
「まぁ、フォトグラフはちっせーから何枚も撮るとなると時間も金もかかっちまうから、いくら弁償するって言っても気ぃ引けるよなぁ」
「コルクボードプレゼントして、元々あった写真や雑誌貼り付けるのもいいんだけどな・・」
そう言って小さな絵ハガキを出す。見ればまるで生きているかのようにすごいタッチだ写実派でもここまですごいのは・・・・
「これはどうやって描いたんですか!?」
思わず聞いてみると、どうやらこれを作る専門の機械があり、被写体を投影して薄い紙に焼き付けてあるらしい。