第4章 導きの星は誰を照らす
旅先にココを選んだのは偶然だった。知り合いに絵の題材となる様な場所はないかと尋ねると、この国を紹介してもらった。
長閑な田園風景、自然と調和がとれた賑やかで不思議な街並み。
森の動物を引き連れた街の人。
とても不思議で見るもの全てに魅了され、ふとした故郷との共通点に懐かしさを感じる。
街の街路樹の下で絵を描いていた時に、自分の絵をいたく気に入った。そう話してくれた若者にある場所を描いて欲しいと頼まれたのが運命の始まりだった。
普段、頼まれて絵を描くことがなくなったのだが、聞けば、恋煩いをしていてその人との話題づくりの為に彼女が住んでいる風景を知りたいのだと言っていた。
「彼女はそれはもう美しく、その髪は太陽の様に輝く稲穂、冴え冴えとした残月の残る青く澄んだ瞳。知的な容姿。太陽の神が女の姿に変えて敬虔なる信者たる私に遣わせて頂いたまさに慈悲の象徴!」
あまりの陶酔振りと、酷い言い分であるが容姿に合わぬ詩人的感性に少し対応が困ったものの色んな場所を見に行きたかったこともあり、その村を訪ねることにしたのだ。
そして、村に着いたのが昨日の夜半過ぎ、一晩の宿を貸してもらう為宿屋に向かったが生憎、宿屋は空いていなかった。
宿屋を切り盛りしている女性が持病の為倒れてしまい、慣れぬ自分達では宿泊客に満足なサービスが出来ないのですまないが村長宅に泊まって欲しいと言われた。
別段、食事も自炊出来るし、この村でお湯を張った風呂はこの宿と村長宅にしかない。その上村長宅の湯船は先住民在住(←?)らしく使えない。ならば、と思いサービスについては気にしなくていいと話し、宿屋に泊めてもらった。