第6章 ダリアと怪我。*
言われて改めて折れたヒールを見ると確かに三角。ヒールを差し出すと嬉しそうに受け取った三角くんに感謝の言葉を伝えられ、なんだか不思議な空間に思わず変な顔で笑うことしか出来なかった。
三角くんがポケットにヒールを入れると次は三角くんに手を差し出された。首を傾げながらその手を握るとぐいと強い力で引かれて立たされ、そのまま三角くんに抱き締められる形で止まる。咄嗟のことに反応できずにいると体がふわりと宙に浮き、理解が追い付かないままに勝手に体が前へ進んだ。所謂お姫様抱っこというやつをされていることに気付き慌てて三角くんに声を掛けた。
「三角くん、重いから下ろして、」
「むっ、オレこれでも力持ち!だから大丈夫~!」
「そうじゃなくて、」
ひょいひょいとまるで軽いものを扱うかのように私を持ち上げて見せた三角くんに、きっと何を言っても無駄なんだろうと早々に諦めることを決めるも、きちんと私が落とした荷物も持ってくれていて申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
寮へ辿り着くと談話室のソファーに降ろされた。荷物も隣に置かれほっと安堵の息を吐く。足の擦り傷に加え捻っていたようで歩くのが困難だったのでとても助かったと三角くんに感謝を伝えると大きな目が弧を描いた。ぱぁっと笑顔が輝き、その眩しさにこちらも笑顔になる。
「きず、消毒しなくっちゃ」
「あ。あとは自分でやるから大丈夫だよ、ありがとう」
「オレがやってあげるからはるは座ってて」
いつになく真剣な表情で言われるとその言葉に従うしかなく、お願いします、と伝えると三角くんは大きく一度頷きばたばたと談話室を走り回って救急箱や傷口に付いた土を落とすための濡れたティッシュなんかを持ってきてくれて、必要なものを揃えると私の足元に跪いた。任せていいのだろうかと制止しようと伸ばした手を掴まれ、三角くんが一度顔を上げると大丈夫、と再び笑顔を向けられた。
僅かに触れた濡れたティッシュに傷がぴりと痛む。ぽんぽんと優しく傷口を叩きながら土を落とすと次は消毒液を容赦なく掛けられ、思わず小さく足が跳ねた。三角くんはそんな些細な動きを見落とさず、手を止めて私を見上げた。