第4章 風邪を引いた日のとある日常。
とても良い環境にいるのだと改めて思う。心配してくれたみんなの為にも早く風邪を治さないと。満腹になったお腹がゆったりと私を夢の世界へと誘った。
ひんやりとした感触が頬を撫でた。長い眠りの後、うっすらと目を開くと暗い中にぼんやりと紬さんの姿が浮かんでこれは夢なのか、それとも現実なのか分からず未だ頬を撫でるひんやりとした何かにすり寄った。くすくすと笑う声が更に現実と夢の境界をあやふやにするように鼓膜を撫でる。
「すみません、起こしちゃいましたね」
「…つむぎさん、」
「俺もお見舞いに来たかったんですけどみんなが頻繁に出入りしてるって聞いて遅れてしまいました」
未だに頬を撫でたまま紬さんが言葉を続ける。柔らかな声が耳に心地好くふわふわと思考が定まらない。離れそうになった紬さんの手が惜しく、自分の手を重ねてまだ離さないでと視線を向けた。
「タオルを変えるだけですから」
困ったように苦笑を浮かべる紬さんにいやいやと首を横に振る。熱は何故だか思考を退行させる気がする。無性に寂しさが募り体温が離れて欲しくなく、重ねた手をぎゅっと握った。吐き出した息が熱い。少し熱が上がったのかも知れない。
「のど、かわいた…」
「あ、飲み物取ってきますね」
「つむぎさん、」
「、」
視点も思考もぼやけて、なにも考えられない。無意識に目の前の頬に手が伸びる。驚いたように一瞬肩を揺らした紬さんが、しかしなにも抵抗する様子もなく私を見た。私よりも遥かに低い紬さんの体温が心地好くぐっと引いて顔を寄せる。
「つめたくてきもちい…」
「…さっきまで外にいたので。あの、」
「もうすこし…」
「はるさ、」
ひたり、頬同士が密着する。すぐそばで息を呑むのが聞こえ、小さく私の名前を呼ぶ。ゆっくりと頬が離れると紬さんの瞳が私を射抜き、こつんと額を合わせられる。睫毛が触れ合い、目を閉じるとすぐそばで紬さんの息遣いを感じた。