第4章 風邪を引いた日のとある日常。
「東サンに聞いたッスよ!病人にはあーんで食べさせるって!だから俺っちあーんしたいッス!」
お願い、と子犬のように目をウルウルさせる太一くんに断り切れず小さく一度頷く。薬味を選ぶと先ほどまでの目に溜まった涙はどこへやら、満面の笑みを浮かべた太一くんがお粥を一口分掬って私の目の前に差し出した。太一くんからの期待の眼差しが痛く目を伏せて受けると出来立ての熱さに一度付けた口を思わず離してしまった。
「っ、あ、ごめん…汚いよね」
「ふーふーも大事ってこと忘れてたッス!」
「あ、え、」
一度口を付けたスプーンに向かって数回息を吹きかけた太一くんは再び笑顔で私へと差し出した。それを受けるとまるで尻尾を全力で振っているようなビジョンすら見えそうなほど笑顔が輝いた。そこまで喜んでもらえるとなんだか恥ずかしく、再びお粥を一口差し出されると視線を合わせずにすぐに口へ運んだ。
お粥が全て無くなったころ、まるでタイミングを計っていたかのように部屋のドアがノックされ臣くんが部屋に入ってきた。その手にはデザートがあり、またしてもさすが臣くんと心の中で呟く。
「デザートは杏仁豆腐にしてみた」
お盆に乗せられた杏仁豆腐はとても綺麗に輝いていて、お粥で満たされたはずのお腹が早く食べたいと声を上げる。差し出されたスプーンを受け取り一口。頬が蕩けそうな触感と咥内に広がるミルクとフルーツの香りに思わず頬を押さえる。
「はは、満足してもらえたようで何よりだ」
「すっごく美味しい!」
「臣クン!俺っちも食いたいッス!」
「太一の分は冷蔵庫に入ってるから後で食べな」
「やったー!」
二人の和やかな会話を聞きながらも杏仁豆腐を次から次へと口へ運ぶ。すっかり空になったお皿を臣くんが嬉しそうに眺め、お盆ごと私から引き取ると次いで薬と水を渡された。大人しく薬を飲んでいると臣くんが満足そうに頷いた。
「うん、顔色も良さそうだし、あとはゆっくり休んで寝てくれ」
「ごめんね、たくさんお世話になっちゃって」
「なに言ってるんスか!困ったときはお互い様ッスよ!」
「そうだね、ありがとう」
布団に埋まりへらりと笑顔を見せると二人も笑顔を返してくれた。それから少し言葉を交わし、二人は部屋を出て行った。