第4章 風邪を引いた日のとある日常。
額にひんやりとした感触を感じて目を覚ました。小さく呻き声を上げゆっくりと目を開くとぼやける視界に私の額に冷えたタオルを置く誉さんの姿が映った。慌てて起き上がろうとする私の体を静かに制される。
「寝ていた方がいい。風邪を引いたならそう言ってくれればよかったんだ」
「…すみません…」
「いや、君を責めたいわけじゃない。…心配したんだ、とても」
困ったように眉を寄せ、ひとつひとつ言葉を選びながら誉さんは話す。普段あまり私のことを気にかけていないものかと思っていただけに、心配という言葉に胸がきゅっと締め付けられる。感謝の言葉を口にすると誉さんの表情が綻び、繊細なものを扱うかのようにそっと頬を撫でられた。
「みんなも心配している。欲しいものがあればいつでも言ってくれ」
あまり居座っても邪魔だろうと誉さんはそう言い残して部屋を出て行った。
小さく息を吐き時計に視線を移す。先ほど起きてから長針は優に一週はしていた。溜息を一つ。世話をする側の自分が反対に世話をされてしまうなんて。
体はとてもだるい。なのに眠る気にもなれず、しかしその場から動くこともできない。喉が渇いた。なにか食べたい。欲望ばかりが募り何度目かの溜息が零れる。
いつの間にか眠ってしまっていたのか、ドアをノックする音で目を覚ました。たくさん寝たおかげか体を起こすのもだいぶ楽になったと思う。ノックの音に返事をするとひょこっと太一くんが顔を出した。可愛らしい笑顔を浮かべお盆を手に部屋に入ってきた太一くんはサイドテーブルにお粥が乗ったお盆を置いてベッドの横に腰を下ろした。
「体調の方はどうッスか?」
「うん、みんなのおかげでだいぶ良いよ」
私の言葉に太一くんは更に顔を輝かせる。表情や態度に裏表のない素直ないい子だと改めて感じる。太一くんはお粥をお盆ごと手に持つと一緒に乗った薬味をひとつひとつ説明してくれた。どうやら臣くんの提案らしく、一瞬でもお粥に飽きないようにと用意してくれたらしい。即席にしてはとても種類も多くさすがとしか言いようがない。
「最初はどれにするッスか?」
「えーっと…あ、渡してもらえれば自分で食べられるよ」
「…俺っちあーんしたいッス」
「え、」