第4章 4章 はなす
◎月 ×日
今日、朝飯も食べずにあの公園へ向かった。
俺は、腹を満たすことよりも心を彼女で満たした方がいいと思った。
(あ、母さんの料理は上手くて俺は大好きなんだ。)
向かった公園にまた彼女が居たんだ。飛び上がってしまいそうなほど幸福だった。
今日彼女は、真っ直ぐ景色をみつめてた。
綺麗な横顔を伺うことができた。やはりサングラスが無いと鮮明に彼女を見ることができて本当に良い
綺麗過ぎる顔を横目に俺は昨日、彼女の飲んでいた同じコーヒーを啜った。
ああ、美味しい
以前も飲んだことがあったが、ここまで美味しいと感じなかった。
彼女のおかげだ。
そうして俺の顔に気味悪い笑顔を引っ付けてる間に俺はとっくにカラになった缶コーヒーをおとしてしまった。
乾いた音が鳴り、コロコロ転がっていく。
慌てて目で行く先を追うと、俺が口つけた空の缶は
あの美しい彼女の手の中にあった。
今日も細く白い指だなんて訳わからんこと考えながら恐る恐る自身の面をあげると、
そこには
まるで聖母のような微笑みを浮かべた彼女がいた。
見惚れていると、彼女は熟れたような色の唇を動かした。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」と俺は答えた。
まわりからみたらソレは、
なんでも無い会話だろう。
だが俺からするとソレは、大きな希望だった。
彼女はただ美しい人形じゃないし、眼に俺を映すことができる。
ということはまた会話ができるかもしれない、ということだ。
それに何しろ、落ち着いた中にも若者らしさを感じる綺麗な声だった。
花みたいだ。
そんなことを脳内フルパワー全開で考えている間にまたひとつ奇跡が起きた。
「このコーヒー、美味しい。ですよね。」
あまりの突然な出来事に俺は
「あぁ、えっと、はい…!」
なんて弱々しく答えることしかできなかった。自分のもやしみたいな回答に赤面した。
すると彼女は口角を震わせて、ふふふと笑った。
今迄の顔も綺麗だったが、もっともっと笑った顔は綺麗だった。
これに関しては綺麗なんて言葉で片付けるものではないと思う。
5分程沈黙があり彼女はまたあの声で
「それでは、」
と髪をふわりとさせてきえていった。
しゃんとしたその姿にまた俺は心を奪われた。
俺も帰ろうとして一歩進むと花の香りがした。彼女の香だった。