第1章 "元"カップル
「また仁王くんとお昼?」
仁王と分かれて教室に戻った奈々に話しかけてきたのは、先ほど中庭で丸井とランチをしていた川村 茉子(カワムラ マコ)。
「うん。アンタもまた丸井くんとご飯食べてたでしょ」
自分の席に着きながらお互い様だ、と言うように返事をした奈々とは所謂、幼馴染だ。
「なんでそんなに仲良いのに別れちゃったの〜?」
その言葉に少し考える素振りを見せた奈々は茉子の方を向いて
「付き合ってても、別れても、私と仁王は変わらないから」
と答えた。
何も変わらないわけではない。
もちろん恋人らしいことはしなくなった。
が、それ以外は本当に変わらない。
手は繋がなくなったが部活終わりの時間が被れば仁王と下校する。
今日のように茉子が丸井とご飯に行けば、仁王とお昼を過ごす。
キスはしなくとも間接キスはしている。
「確かに変わらないかも…」
言われて茉子も少し考えてみたが、2人は別れたからと言って気まずくなったわけではない。前と変わらず仲良しだ。
「お似合いだったのに勿体無い」
茉子はボソリと呟いた。
「茉子も丸井くんとお似合いだよ」
次の授業の準備をしながら返事をした。
そんな奈々に視線を向けた茉子はじゃあなんで別れたの…と複雑な気持ちになった。