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rain of tragedy【黒バス/ナッシュ】

第1章 rain of tragedy


「・・・・・・」


擦り目に欠伸を零し、携帯の時計を見る。
設定していたアラームの時刻よりも早く目が覚めた名無しは、その瞬間に胸をざわつかせ、窓の外の晴れやかな雰囲気とは裏腹に、もやもやとした気持ちを抱えていた。


「・・・・・」


自分の部屋のものとは到底違えたサイズの、そこは広々としたベッドの上。

隣に居たナッシュはまだ目を覚ましておらず、名無しは、彼が眠っている間に自宅へと戻る為、早々に起床していた。




「・・・・はぁ・・」


喉はまだ痛い。
相変わらず出すべきでないと分かっていても、その情感にたまらず喘ぎは溢れ漏れてしまう。


名無しが起きてすぐ、静かに向かった先は洗面所だった。
そこに立って顔を洗いながら、目の前の大鏡で自分を見つめ、ため息をひとつ零す。

顎先から水を滴らせ、手に持ったタオルはその役目を果たせずにぎゅっと握り締めたまま。
そんな状態で彼女が悔やんだのは昨夜の情事だった。


「・・・・・」


何度も何度も呼び出されては断れないまま。
本来ならノーと言える筈の口は、いつまでも留守を決め込んでいる。

どんなことでも、少しでも感情に変化が起きれば、ナッシュには必ず見抜かれるというのに・・・。
悔やむくらいなら、いっそ彼に抱かれることを喜びに感じたい。

ナッシュのことだけを考え、彼を愛しく想えたら、どんなに幸せになれただろうか。


「鳥が鳴いてやがる・・・フフ、いい天気じゃねえか」

「!!・・・・ナッシュ・・」

「帰るんだろう?今日は・・・大事な大事なお約束があるんだよなァ?」

「っ・・・え・・、・・・う・・!」

「ナメた腰付きで人の上に乗りやがって・・・そのくせ何度もイキたがる・・・とんだ女だぜ、まったく」

「ッ・・ナッシュ・・・」




鏡の前。
自分を見つめ、虚ろな瞳をした自身のなんと醜いことか。

ようやく手中のタオルを顔に宛がって水気を拭き取りながら、名無しは思い返していた。


ナッシュと会わなかった数日のあいだ、携帯に増えた、他の男の番号のことを――。
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