• テキストサイズ

桜の散った後は

第1章 刀剣女士顕現


「私の名は雫。しがない無銘刀でございます。若さと暗殺の腕では負けませんよ」


とある本丸。審神者が鍛刀すると、そこには刀剣男士ならぬ刀剣女士が顕現された。


近侍は初期刀でもある加州清光。審神者と加州は二人して大口を開けて固まった。


政府からは刀剣女士の実装はなにも伝えられていないぞ……?それに聞いたことのない名だ。


おかしいなぁ、と首を捻る審神者。そんな審神者の様子に気付いたのか、雫は不安そうに首を傾げる。


『……主さま?』


主「あ、あぁ……悪いね。ここで刀剣女士が顕現されたは初めてだからね。驚いてしまった。ここは男所帯で苦労をかけると思うが、宜しく頼む。ここにいるのは私の初期刀の加州清光」


審神者は己の自慢の初期刀である加州を紹介しようと、雫の視線を加州に向けさせる。


主「こいつがこの本丸で一番練度が高いし、長く住んでいる。なおかつこう見えて面倒見が良いから何かあれば加州を頼ればいい。女子力もこの本丸一番だ。話が合うだろう」


『はい。清光、宜しくお願い申し上げますね』


審神者の説明を受けて、雫が加州に微笑んだ。その呼称と親し気な雰囲気に、おや、知り合いだったのかい?と声にしそうになった時。審神者は異変に気付いた。


いつもこういった顕現の時、加州は新たな仲間に自ら自己紹介していた。


「俺は主の初期刀の加州清光。練度とこの本丸の居住歴は俺が一番。何かあれば頼ると良いよ」


こういった要領で己の立ち位置を示し、次に新たな刀剣に関係する刀剣たちの存在の有無を伝え、本丸を案内しに出て行く。


それがどうだ。加州は雫が顕現した直後からずっと俯き、沈黙していた。


不安に思った審神者が話し掛けるが、全く反応がない。次に雫が加州に呼びかけると、加州はぴくり、と身体を揺らした後、ふるふると震えはじめた。


なんだ、痙攣か!?と審神者がその震え具合に救急車を呼ぼうかと検討し始めた瞬間、加州は動いた。


見えないほどの速度で顕現部屋の襖を開けるや否や、本丸中に届くように声の限り叫んだ。


「至急新選組集合ぉぉぉぉぉおーーー!!!」


加州清光を初期刀に選んで数年。これほど取り乱した加州を見たのは初めてだったと後に審神者は語る。










/ 16ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp