第1章 人が心から恋をするのはただ一度だけである
『しょーと!』
世界で一番大好きな人の名前。
私が呼ぶのをまだ許されてた頃。
「綾乃、
しょうとじゃなくて「兄さん」だろ!
お父さんに叱られるぞ。」
『同い年なのに、
なんでしょーとのがお兄さんなの?』
まだ何も知らなかった私は、
ぷくぅと頬をふくらましてみせる。
「僕のほうが、
綾乃より強いからだろ」
『でも私の個性がないと、
しょーとだって困るでしょ?』
「・・・それは、そうだけど」
お兄ちゃんは少し考えて、私に言った。
「僕は綾乃を守るヒーローになるよ。
だから、ずっと一緒にいよう?」
『・・・うん、わかった!
私のことずーっと守ってね!』
まだ私たちが5才の頃のお話。
それから数年後、
この時の約束は破られることになる。