ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第1章 契約の話
この人なんでこんなに必死なんだろう?と頭の片隅で考えながら、確かに約束はしたな、と割り切ってお金を1枚だけ貰った。
「こんな大金困ります。今回は酔ってたし、このお金は朝私を辱めた慰謝料として貰っていきます。黒髪で勝生選手に似てる人は他にもいると思うんで、頑張って探してください」
「そんな!本当にどうしても駄目なのか?君じゃないと、無理だ。マッカチンだって君のことを気に入ったみたいだし、他のやつじゃダメなんだ…お願い、もう少し考えてみて?」
あまりにも肩を落とす姿に、桜はノーと言いきれず、自分の優柔不断さに呆れながらも「なら1回につき5000ロシア・ルーブル(一万円位)払ってください、それで割り切ります」とまたも同情でそんなことを口にしてしまった。
「ええ?安すぎないかい?」
「体を売るなんて良心の呵責に耐えきれない、でも無償でダッチワイフになるのも耐えきれない、そんな心情を察してください」
「ううん、よくわからないな。俺はユウリの代わりに君を抱く、君は俺に抱かれてお金を貰う、それでwin-winだと思ったんだけど…でもきっとそういう君だから続けてお願いしたくなったんだと思う。ああ、もし恋人や好きな人が出来てこの関係が辛くなったら言ってほしい、そこまで無理を言いたくないしね」
桜は既に結構無理を言われてた気がしてきたけれど、口には出さず、1度頷いてみせた。
それからはトントン拍子に事が運び、桜は服やスマホを返して貰え、ヴィクトルに家の近くまで車で送ってもらった、
「じゃあまたよろしくね、あ、堅苦しいのは無しだよ?口調、崩してね」
「うん分かった、じゃあまた」
家に帰ると桜は両親からヴィクトルと知り合いだったのか?彼が桜に相談があるから昨夜は泊まらせるって言ってたけど、なんの相談を受けてたの?と問い詰められた。
なんか勝生選手が好きらしくて、日本人はどうやったら恋に落ちてくれるかを聞かれた、と適当に答えると、やっぱりあの2人はそういう仲なんだなと納得し、解放された。
桜は私が襲われたりとか思わなかったの?と拗ねて聞けば「あのヴィクトル・ニキフォロフが?あはは、ないない。選り取りみどりでしょう?」と私と同じ考えを返されたので、まあそりゃそうか、と心を落ちつかせたのであった。