ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第6章 ヴィクトルが手に入れる話
「送ってくれてありがとう、じゃあ、またね」
「寂しいけど、我慢するよ、また来て?泊まりの仕事や長期で家を出る時は連絡するから、それ以外の日なら今度は連絡なしでも俺がいなくても勝手に入っていいからね」
「……?ああ、家の鍵の話しね、あはは、うん。そうさせてもらう、ありがとう。マッカチンもバイバイ、またね」
「わん!」
マッカチンの散歩がてら、桜を家の近くまで送ると、ヴィクトルは愛おしそうに彼女が家に入るまで見届けてから、自らの家へと足を向けた。
そして、長かった夏休みは終わり、ヴィクトルもシーズンが始まった事で、2人の会える時間はだんだん減っていった。
そんな忙しい中、およそ半月振りにヴィクトルと出会える日の事だ。
行く時間をきちんと連絡をしてから、彼女は愛する人の家へと急ぎ歩いていた。
服は以前ヴィクトルに貰ったあの服…着用はまだ2度目のその服を、そろそろ気候的に着れなくなってしまう為、衣替えをする前にちゃんと見てもらおうと思ったのだ。
逸る気持ちを抑えて夜道を歩いていると、ふと茂みが揺れて、大きな男が現れた。
「お嬢ちゃんこんな時間にどうしたの?子供はもう帰らないといけないよ?」
「あ、えっとこう見えても成人なのでお構いなく、家も直ぐそこなのでもう帰ります」
「本当かな?東洋人は幼く見えるっていうけど、怒られると思って嘘をついてない?いけない子だね、お仕置きしてやらなくっちゃ」
「っ」
桜はぺろりと舌なめずりをした男の様子が明らかにおかしい事に気付き、脇目も振らずに走り出した。
しかし、体力とリーチの差からすぐに捕まってしまい、生垣の奥へと連れ込まれてしまった。
「いや、やめて!!っんんーーーっっ」
大きな手で口を塞がれ、為す術もなく抑え込まれる。
そして、ビリ、と服を破られて、その手が桜の柔肌へと触れた。
「んぅぅーーーーーっ!!」
男がつう、とお腹を撫でたその時だ、どんっと音がして、覆いかぶさっていたおおきな男が目の前から消えた。
「桜!!!」
「ヴィーチャ…?」
愛する人に名前を呼ばれ、しっかりと抱きしめられた事で、桜はひどく安心してその大きな背中に腕を回した。
(ヴィーチャが助けに来てくれた!)