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ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】

第5章 関係が変わる話


「ヴィクトル選手、具合が悪いんですか!?」

彼がああなったのは自分のせいだ。
けれど知り合いのように声をかければ何かしら雑誌の記事に書かれるかもしれない。

そう思い、桜はヴィクトルに大きな声でそうら呼びかけて駆け寄った。

「桜…?」



話は少し遡る。

ヴィクトルがここに来ていたのは、もしかしたらまた桜と出会えるかもしれないと思っての事だった。

ふらふらと宛もなくさ迷うように歩いていると、少し離れた場所…そう、あの時彼女を見つけた場所から桜の声が聞こえた。


一目見たい!その一心でその場所へと走れば、あの時の場所で、あの時の男と一緒にいる彼女を発見してしまった。

(またあの男!!!)

桜と仲違いをした原因の男…
ヴィクトルは腸が煮えくり返りそうになった。

思わず一歩踏み出した所で、ふと、冷静な自身の声が聞こえた気がして、その歩みを止めた。

(このまま、あそこへ行ってまた彼女を家に連れていく気か?そして罵って、乱暴にして、怖がらせて嫌われるつもりか?この間のように)

「だめだ…」

怖がらせたくない。嫌われたくない。


ああ、でも楽しそうな彼女の姿を見ていると、自身を止められない。
段々と思考がまともに働かなくなって、直ぐに彼女のもとへ行って連れ去りたいのに、冷静な自分がそれを諌める。

(彼女を取られてしまう!
でも今日も彼女から返事は無かったから俺には逢いたくないんだ。

どうしよう?どうしたらいい?

だめだ、近付いちゃ、嫌われる。嫌だ!嫌だ!)

そうして、身動きが取れなくなってしまい、ヴィクトルは蹲ってしまった。




すると自分を気遣う声と走り寄る音が少し遠くから聞こえた。
それは愛する人の声に思えて、ついに幻聴まで聞こえるようになったかと弱々しく顔を上げれば、そこには自身を心配する桜の姿があり、ヴィクトルは目がこぼれるのではないかと思うほどに、そのブルートルマリンのような瞳を見開いた。

「桜…?」




桜は呆然と見上げてくるヴィクトルの耳元に顔を寄せると、離れようと提案した。

「立てる?ここは目立つから移動しよ?」

「あ、あ桜、桜」

「あ、こらちょっと!ダメだってばっ」
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