ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第5章 関係が変わる話
「だから手っ取り早く恋人同士になればずっと離れないで傍にいると考えた。
けれどあなたはもともとノーマルで、性欲だって溜まる。
けど貴方は僕のことを好きだと勘違いしてるから誰にも手を出せない。
そこでたまたま彼女と会ったのかな?そこは僕には分からないけど、きっとそんなに間違ってはないと思うんだけど、どう?」
迷子のような顔をしてるヴィクトルは、一言も発さない。
勇利はさらに続ける。
「ヴィクトル、自分の気持ちに嘘つくのやめなよ。じゃあ僕があなたと付き合いたいからもう彼女とは会わないでって言ったらどうするの?」
「あの子と会えない?なぜ?だってあの子は俺の…」
「ヴィクトルのものじゃないよね?」
そう、契約も切れた今、ヴィクトルと彼女を繋ぐ関係は何もない。
「あのさヴィクトル、会うのをやめてって僕が言っても会いたいって自分が思ってる事理解してる?
だいたい僕も彼女も欲しいってそれは欲張りすぎじゃない?」
「欲張り…?ユウリと桜を求めるのは欲張りな事…?」
勇利の言葉を聞いたヴィクトルは衝撃を受けた。
確かにそうだ。
愛する勇利が自身と恋人になったら身代わりの桜は要らないはず。なのに欲しいだなんて、それは身勝手な話。
ヴィクトルは自身の勘違いにやっと気が付いた。
「ヴィクトル、僕は彼女と貴方が恋人になっても離れていかないけど、僕と貴方が付き合ったら彼女とはもう2度と会わせないよ、さあヴィクトル・ニキフォロフ、あなたはどうしたいの?」
勇利の力強い言葉を聞いて、ヴィクトルはもう一度自身の気持ちを確かめる。
そして出てきた答えに、もう迷いは無かった。
「俺、俺は…あの子と恋人になりたい、でもどうしよう勇利、こんなに人を好きになるのは初めてだよ、どうしたらいいかわからない」
百戦錬磨の彼らしくない弱気な発言に、彼の弟子は苦笑すると、ひとつ忠告を口にした。
「まずは仲直りしないといけないでしょ?あの人凄く怯えてたし、また怖がらせたらもう絶対会ってくれないと思うよ」
「気をつけるよ、気持ちに気付かせてくれてありがとうユウリ」
もうヴィクトルは大丈夫、だから後はヴィクトルと彼女の問題だ。
きっと彼女に余計なことをしたと怒られるだろう。勇利はそう思ったが、しかし気持ちは晴れ晴れとしていた。