ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第5章 関係が変わる話
「もう会わない方がヴィクトルのためだよ、絶対。」
さらに追い打ちをかけるかのような勇利の言葉を聞いて、そこでやっとヴィクトルは桜にとって不名誉な先程の言葉を否定する事が出来た。
「でもユウリ、さっきはああ言ったけど、本当はいい子なんだよ、ずっと会えてない、会いたいんだ」
その言葉を聞いた勇利は、ふぅ、と小さく息をついた。
そして今までとは違い、ヴィクトルを気遣うように優しい声で話しかけた。
「ヴィクトル、ちょっと話しない?」
「また引退とか俺から離れていくとか考えてないだろうね?」
バルセロナの夜。これがあったからヴィクトルはこんなに拗らせてしまったのだろうと勇利はそう思った。
「そういうのじゃないよ、あの女の人の話。ヴィクトルに後悔してほしくないから、ちゃんと話したいんだよ」
それから、数時間後、仕事を終えて帰宅したヴィクトルを訪ねて勇利がやってきた。
ソファーに座り、ぽつりぽつりと勇利はヴィクトルに話しかける。
「バルセロナでの夜、僕はヴィクトルにトラウマを植え付けちゃったんだね、ごめんね、もう勝手に決めないし、ちゃんと相談だってするから安心してほしい。
それを踏まえて聞くけど、ヴィクトルは彼女が好きなんだよね?それに気づいてる?」
「俺が彼女を?まさか、だって…」
言い淀むヴィクトルに勇利は尚も続ける。
「僕の身代わりだから好きになるなんて有り得ないって思ってる?
あ、今何でって思ったでしょ?わかるよ、だって彼女僕に似てたし。
ヴィクトルが僕を見る視線、ちょっと怖いと思ってた。
僕をそういう意味で好きなんだって思ったよ。
でもね、その視線がただ子供が母親を取られたくないって、嫉妬心から来るものだって事に気付いたんだ。
そもそも僕の身代わりに女の人を選んでる時点で男は駄目ってなんで気付かないかな?」
「違う、俺はユウリが好きで、ユウリに離れていって欲しくないって思ってたんだよ?」
「僕が言えることじゃないけど、ヴィクトルって人付き合い苦手だよね?
みんなに平等で社交的だけど、本当に気を許してる相手って少ないんじゃない?
ヴィクトルは多分僕がまた離れていかないためにどうしたらいいかが分からなかった。
友達、ライバル、コーチ…全て競技人生に終わりが来たら僕は日本に帰る。サヨナラだ」