ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第2章 身代わりの話
そして彼女はもう一度ヴィクトルの頭をぽんぽんと撫でてから
「どういたしまして、じゃあ帰るね」
と、あっさり帰宅する旨を伝えた。
それを聞いてヴィクトルは慌てて桜をの腕を捕まえた。
「ええ?待って、もう帰るの?泊まっていってくれないの?」
一気に不安げな表情になって、縋るように見つめられれば無下にすることも出来ず、しかし明日は学校があるので泊まって行くのは難しいと判断した桜は、素直にそれを口にした。
「明日は1限から授業あるし、出来ればお泊まりは無しで今日中に帰りたいの」
「……次はいつ会える?泊まれる日、次の土曜日まで待てないよ」
ヴィクトルはソファーに掛けたまま、桜の腰に腕をまわし、距離を詰めると、甘えるようになだらかな腹部に擦り寄ってそう訊ねた。
「水曜日は授業が3限からだから、明後日なら泊まれるけど、明後日でもいい?」
「明後日…じゃあ明後日来て、あと、もし可能ならここから大学に行ってほしい。明後日は俺も早く出なくていい日だから、車で送ってあげるよ」
「それはまずいでしょ、私一応勝生選手を装ってここに来てるんだから、流石にバレちゃうよ」
「それもいいね、パパラッチされたら大切な友人だって紹介出来る」
お腹に顔を埋めたまま、ヴィクトルはそう言った。
(またこの人は本気なのか冗談なのか、分かりずらい。
まあ冗談だろうけど…。)
桜は内心ため息をついて、御座なりな返事を返した。
「はいはい、じゃあ万が一雑誌に載ったらそうしてね」
「ふふふ」
「そこで笑われると擽ったいなぁ、離れるか笑うの禁止ね」
「ええー、ケチ、そんなことを言うサクラにはお仕置きだよ」
そして、ヴィクトルは思い切り息を吸って、彼女のお腹に吹き込む遊びを思いついた。
「やだ、なんか生暖かい、気持ち悪い」
「ふぅーーー」
「こら、やめろこの28歳児め!」
「あはははははは」
そんなやり取りを楽しんで、この日はもう遅いし危ないから、と夜道を車で送って貰った。
次の日の月曜日、ユウリと仲直りできたよ!と連絡がきて、桜はほっと安心のため息をついた。