第2章 可愛いお姉さん
三時間目を控えた休み時間。
腹の虫が鳴り出した体に、コンビニで買ったパンを一袋、納める。
ガランとした教室を一人出た俺は、美術室へ向かうべくダラダラ歩き出した。
(あ~、美術かぁ…。俺、絵心なし男だからなぁ…)
今日は何やらデッサンをするらしく、居眠りも出来やしねぇ。
大きくあくびをしながら階段に足を掛けたところで、すぐ真上に見慣れた女子生徒を見つけた。
ロングの黒髪と、長身。
それから何より、俺好みの美脚。
「梨央ちゃ~ん。パンツ見えてるぞー」
「えっ!?」
俺の言葉に、梨央ちゃんは驚いたように身を翻した。
「なーんちって…」
もちろんそんなのは冗談、なんだけど。
どうやらその手には、大量のノートを持っていたようで…。
それを気にしながらスカートを抑えようとするもんだから、グラリと体勢は崩れる。
「きゃっ…!」
「……っぶねぇ…!」
バサバサと落ちていくノートを横目に、俺はその体を抱き止めた。
至近距離で俺を捉えた梨央ちゃんは、驚いた顔でこっちを見てる。
白い肌は、あっという間に赤く染まった。
「てっちゃん…」
「ごめん。今のは完全に俺が悪い。どこも痛くしてねぇ?」
「大丈夫…。私もボーッとしてたから」
梨央ちゃんの体から手を離して、散らばったノートを拾う。
梨央ちゃんも同じように、俺のそばにしゃがみ込んだ。
「これクラス全員分か?」
「うん、英語の宿題。今日日直なの。職員室まで持ってくるよう頼まれちゃって」
「多過ぎるだろ。運ぶの手伝ってやるよ」
「ありがとう」
散らばったノートを全て拾い集めると、それを抱え、梨央ちゃんと並んで歩き出す。