第5章 ご褒美
*汐里視点*
ようやく今日の授業が終わった。
あー、疲れた…怖かった…神経使った…。
勉強部屋から出ると、そこには赤葦さんが待っていた。
「お疲れ様です、お嬢様。真面目に授業受けられたようですね」
「うん…頑張ったよ…。5キロは痩せた…」
「それは大変です。では、夕食は沢山召し上がって下さいね。ローストビーフ」
「……え?」
ローストビーフ?
今日は和食だって…。
「コック長に、メニューを変更してもらうようお願いしました」
「ほんと?」
「はい。お約束した、ご褒美です」
「わぁ!ありがとう!」
さっきはちょっと怖かったけど。
やっぱり赤葦さん優しいっ!
「お茶の用意もしてありますので。月島先生もどうぞ?」
「どうも」
「今日のデザートは、お嬢様のお好きなモンブランですよ」
「やった!でも珍しいわね。いつもツッキー来る日は苺のショートケーキなのに」
「月島先生が、今日はお嬢様のお好きなものをと…」
「赤葦さん」
「何ですか?先生」
「面白がってます?」
「いえ。特には」
……。
何…?
ツッキーが、私の好きなデザートを出すように頼んだってこと?
「たまには違うもの食べたかっただけだから」
素っ気なく、念を押すようにそう言うけど、何だか少しバツが悪そう。
意地悪ツッキーが?
ほんとに?
客室のテーブルの上に用意されたのは、モンブランとアールグレイ。
ツッキーが気を利かせてくれたスイーツも、赤葦さんが淹れてくれた薫り立つ紅茶も。
そのどちらもが、私の疲れた心を癒してくれた。
【 end 】