第1章 悪魔参上。
どっぷりとした重たい夢から目を覚ます。疲れた時って、夢が重い。
「んんんっ」
腕を上にあげて、大きく伸びをする。時計を見ると、すでにお昼を回っていた。でも焦る必要は無い。今日は日曜日。仕事はない。
不意にぐうっと音を立てたお腹を押さえながらベッドを降りる。
「ん?美味しそうな匂い……」
あまりに食欲をそそる音で、ついほっこりと和やか気分になりそうになったが、途中ではっとする。
このアパートの204号室の住人は紛れもなく私だ。なのに、どうしてこんな匂いがするのだろう。住人である私は今起きたばかり。つまり、私以外の誰かがこの部屋の中にいるということになる。
私はすぐ近くにあった枕を抱き抱えて寝室を出て、リビングへと向かう。この枕はもちろん護身用だ。もし、相手が私の気配に気付かず、背後まで接近できたら、この枕を後ろから相手の顔に押し付けて私は逃げる。もし、気付いたとしても、相手の顔に枕を投げつけてその間に逃げればいい。
おそらく、侵入者は空き巣だろう。
いやでも、こんな呑気に料理を作る空き巣なんているのだろうか。まあこの際なんでもいい。どんな理由でも不法侵入に変わりはない。