第2章 心臓を捧げる右手
ペトラの後ろには、目付きが悪いどころではない少女が立っていた。兵服を着ているから、訓練兵の一人だろう。少女は、独特のオーラがあった。
左目を前髪で隠していて、右目は赤く爛々と光っている。くまが酷くて、しかもこちらを睨んでいるように感じる。どこか人を近づけないような雰囲気をまとっていた。
ペトラがそう思っていると、オルオもペトラと同じ事を考えていたようだった。
そして、教官はその少女に叫んだ。
「貴様は何者だ!!」
すると少女はゆっくりと敬礼をし、静かだがよく通る声で言った。
「ウォール・マリア内出身、ユーリ・クルム。」
周りがシンと静かになる。
「…クルム。貴様は何故ここへ来た。」
自然と教官の声も静かになる。
「憲兵団に入るために来ました。」
「何故入りたいんだ。」
クルムは同じ口調でとんでもないことを言った。