第1章 別れ
「あ…あ…」
全てを思い出した。
ガタガタと体が震える。
ユアはどうしただろう。私が捕まったことを知らなければ、とおさんとかあさんがもういないということも知らない。家に帰れば首と胴体が離れたとおさんの亡骸があるだけ。
「ユアを連れて逃げて…」
母の言葉がよみがえる。
「う…うぅ…」
涙が頬をつたう。だが、ユーリはそこまで弱くなかった。
こんなところで泣いている場合ではない。
ユーリの手は、布で縛られているが、なんとか外れそうだった。
部屋に見張りはいない。
逃げなきゃー…!
ユーリは必死に後ろで縛られた手を擦ったり、引っ張ったりしてほどこうとした。
――――――
草むらで花を摘むのは、左目を髪で隠した幼い少女。
不意に、ざわりと風が吹いた。少女が顔をあげる。
「ー…?ユーリおねえちゃん…?」
――――――