第60章 葛藤
「聖知、なんで床に座り込んでんだよ」
「え…」
「ほら…足痛くなるだろ」
「あ、すみません…」
幸男さんは飲み物を机に置くと床に座り込んでる私の腕を掴み、座布団が敷いてる場所へと座らせてくれた。
「何考えてた?」
「え…」
「聖知の顔見ればわかる…何か悩んでる事他にあんのか…」
「幸男さん…」
幸男さんにはいつも見抜かれてしまう。
顔に出してるつもりはないのに…自分の事のように心配してくれる幸男さんに首を横に振る。
「悩んでる事はないです。ただ…今日は色んな事あったなと思って…考えても仕方ないとはわかっているんですけど…」
「ほら、そういうとこだ。」
「すみません…つい今日の出来事が頭によぎって…」
「そうじゃねえ…言っただろ…苦しい時は吐き出せって…今は考えるなって俺は言ったがすぐに気持ちが切替わる事なんて出来ねえ…そう思ってる。聖知の中でまだ割り切れてない部分があるのもわかってるつもりだ。だから、そういう時は何でも話せ。」
「幸男さん…」
考えても仕方ないことを伝える事で、幸男さんを困らせてしまうと思い謝ろうとすると幸男さんは私の手を優しく握る。
真剣な表情にゆっくり頷くと幸男さんはさらに言葉を続けた。
「聖知は無意識かもしれねえが…すぐに1人で背負い込むだろ…俺がいるんだから1人で抱えようとするな」
「…はい」
そっと胸板に抱き寄せられると幸男さんの温もりが伝わってくる。幸男さんの言葉に頷いて服を握り締めるとしばらくの間2人で抱きしめあっていた。