第60章 葛藤
幸男さんの家に到着すると2人っきりだった。
そういえば、るみさんたちは親戚の家に行くと行っていたし、戻らないのかもしれない。
今まで幸男さんと2人っきりになるのが久しぶりすぎて…幸男さんの家に朝いたはずなのに緊張が走ってしまう。
幸男さんはどうなんだろう…
さっき言ってた…お風呂って…
じょ…冗談だと思いたいけど……
「聖知」
幸男さんの真剣な表情を思い出すと…とても冗談に思えなくてソワソワしていると幸男さんが急に私の名前を呼んだ。
「はっ…はいっ!」
「っ……荷物重いだろ、俺の部屋に行ってろ…すぐ行くから」
「へっ…あ、はい…」
そっと繋いでた手が離れると幸男さんはそっぽを向いたまま言葉を続け、私は言われるまま二階へと続く階段へ向かった。
* * *
「お邪魔します…」
誰もいない部屋へと入り、お泊まりセットを近くに置いて床へと座り幸男さんが来るのを待った。
まだお昼の14時
今日は本当に色んな事があった。
幸男さんが来るまで今日起きたことが鮮明に記憶として頭の中を駆け巡った。
桐生と話をしようと心に決めて出かけたけど…花宮が現れて幸男さんを攫った。もうダメだと思った時…辰也くんが助けてくれて久しぶりに再会した。
そして…忘れていた大事な想い出を思い出した。
アメリカにいた時私の心の支えとなってくれた2人の友達…
その記憶を思い出して…私は……
桐生のことが許せなくなった
和解しようと思っていたけど…
大切な友達を私から奪った……自由を奪った桐生が…
許せなくなってしまった…
再びモヤモヤした気持ちでいると後ろからドアを開く音がする。
幸男さんが飲み物を用意して立っていた。