第61章 お風呂※
—笠松side—
何時もより緊張が走る
今も俺の腕の中で聖知の温もりが伝わってくる
自分から言い出したがいざ事に運ぼうとすると言葉が見つからねえ…
飲み物を持ってくる前に風呂掃除を済ませ、お湯張りボタンを押してきた。時間通りならもうすぐ風呂が炊ける。
ただ、風呂が炊けたって言うだけだろ…
さっきだって聖知は拒否してねえし…
自然な流れで言えば言いだけだ
自分に何度も言い聞かせ、聖知をそっと離すとふと目が合う。
伝えるチャンスなのに言葉がうまく出ず、つい目を逸らしちまった。
「……幸男さん…どうかしました?」
「なっ…何でもねえよっ!」
つい、聖知の言葉に反射的に反応してしまい、慌てて振り返ると聖知はキョトンとした表情で俺を見つめていた。
「聖知…悪い…その…だな…」
「……?」
意を決して、聖知を見つめるて伝えようとすると何故か躊躇しちまう。
これじゃ自然に伝えんのは無理だ…
一緒に入ってくれなんて…俺よく言えたな…
最初の余裕どころか聖知になんて伝えるかわからず言葉に詰まっていると聖知の手が俺の手に重なった。
「幸男さん…さっきから…緊張…してるんですか…?」
「………あぁ…してる…してるに決まってんだろ…」
「……?」
聖知の手を握り返すと聖知を抱き寄せ耳元で小さく囁いた。
「風呂…行くぞ」