第60章 葛藤
「…あの…急にどうしたんですか…?」
「………」
「いつもの幸男さんらしくないっていうか…その…急にそう言われても…は…恥ずかしくて…なんて言えばいいか…」
熱くなった顔を幸男さんに見られたくなくて…フイッと逸らしたまま言っても幸男さんは再び沈黙になる。
幸男さんが何を考えているのかわからずドキドキしたまま返答を待っていると再び私のマンションの方向へ歩き出した。
「えと…幸男さん…?」
「……恥ずかしいって事は…嫌じゃねえって事でいいよな…」
「…へ…?」
「俺だってッ…自分で言ってて恥ずかしいんだよッ…でもな…聖知といると…もっと自分のモノにしたい…そればっか考えてる」
「……幸男さん…」
幸男さんに求められていることに嬉しくなり、幸男さんの手をそっと握り返すと私のマンションまでの道のりを歩いて行った。
最近は、特にお父さんがアメリカに戻ってから幸男さんの家に泊まりに行く事が多くなり外泊の準備もさほど時間がかかる事なく終えた。
再び手を繋いで幸男さんの家へと向かう中、幸男さんは終始緊張したような面持ちだった。