第60章 葛藤
「幸男さん…自分の事ばかりって言いましたけど…私が泣いた時1番に心配してくれたじゃないですか……」
「………」
「私も逆の立場だったら…幸男さんを好きだという女の子が現れたらきっと嫉妬しちゃうと思います」
「ッ…!そ…そんな女いねえよッ…!」
「だから…そんな風に自分を責めないで下さい…」
聖知が嫉妬する
それを聞くだけで胸がドクンと脈打つ様を感じた
慌てて顔を上げて聖知を見ると悲しそうに笑っていた
いつもそうだな
思い込んで聖知に悲しい思いさせてちまってる
もうグダグダ考えんのはヤメだ
「聖知…心配させて悪い…今後の事、聖知はどう思ってるんだ?」
「……本当は……桐生の事を許すべきなのは頭ではわかってるんですが……今はやっぱり……許せません…」
「……許さなくていいんじゃねえか…」
「…え…?」
「俺には想像でしかわからねえが…桐生さんがやったことは簡単に許せることじゃねえだろ。この間の話し合いで本人もそれはわかってるはずだ。だから無理に今は許さなくていい。」
「…………」
「許さなくていい…だが…相手を恨む事だけはしたらダメだ。聖知なら心配はしてねえけど…何も解決しない…桐生さんがそうだった様にな…」
「そう…ですね………いつか…許せる日が来るんでしょうか……」
聖知はゆっくりと頷き、青い空を見上げ俺に問いかける。
3人での話し合いを思い出してんのか…幼い頃の記憶を振り返ってんのか… 聖知の少しぎこちなく笑う表情からは何を思い浮かべていたのかはわからないが…
一つだけ言える事がある