第60章 葛藤
—笠松side—
アメリカでの生活の話は前に聖知からの聞いていたし、桐生さんの話やあの時の茶番とも言える芝居で聖知が辛い思いをしてきたと十分に理解したと思っていた。
でも違った。
聖知から話を聞いて人間のすることじゃねえ…
胸糞悪い内容だった。
暴力、人格否定、孤独、軟禁生活…
聖知がされてきた事を知ってはいても…
聖知の感情、気持ちまでは理解できていなかった。
そして何より
許せねえのは俺自身だ
「スマホ…ですか?」
「ああ…俺が代わりに連絡する……今は話すのも辛いだろ…」
「………わかりました…ありがとうございます。」
聖知からスマホを受け取り桐生で登録されている番号に掛けた。桐生さんに今日行けなくなった事、聖知の今の状況や怪我がなかった事など細かく伝えた後電話を切り、聖知にスマホを返した。
「……ありがとうございます。」
「聖知……悪かった…」
「…?」
「悩んでたのに…俺は自分の事ばかり考えてた。辛かったのに全然わかってなかった。挙句嫉妬して…あの時…泣いた時だって…」
「ッ!幸男さん…やめて下さいッ…そんな風に考えないで下さい…私もあの時は気が動転して驚かせてしまってすみません…」
「聖知…」
俺は自分の膝に手をつき、聖知に頭を下げた。
聖知は慌てて俺の謝罪の姿勢をやめさせようとするが俺は頑なに止めようとしなかった。