第60章 葛藤
「聖知、大丈夫か?」
「大丈夫です、すごい人ごみでしたね」
「とりあえず…あそこに行くか…」
「……?」
公園を抜けてようやく人通りが少なくなるとホッと胸を撫で下ろす。幸男さんにそのまま着いていくと違う公園へと着いた。
「ここって…」
「聖知と初めて喧嘩した公園だ……俺にとっては苦い思い出だけどな…でも、ここなら… 聖知と向き合う事ができる。そう思った。」
「……幸男さん…」
自分の過去を打ち明ける勇気がなくて、初めて幸男さんと喧嘩した公園。あの喧嘩がきっかけで幸男さんに全て自分の過去を打ち明けた。
そっと公園に備え付けのベンチに座りゆっくり息を吐く。
「ここって本当に静かですね」
「あぁ…そうだな……」
ふと快晴の空を見上げてすぐに視線を下ろした。
この綺麗な空も景色も約7年間奪われていたのかと思うと…桐生を許していいのか…どうしたらいいのか…ますますわからなくなってきた。
「幸男さん…私が思い出した事…話します。でも、その前に今日の14時からの約束…キャンセルしてもいいですか…」
「…あぁ…疲れてるなら…」
「いえ……ただ…今の私の気持ちでは…桐生と話はできません。」
「…ッ!」
「幸男さんの家を出た時は正直…和解するつもりでいました。でも…幼い頃の記憶を思い出して…やっぱり許せない…そう思っています。」
私は幸男さんに思い出した事を全て話した。
辰也君の事、当時の私生活の事…
そして私が軟禁される経緯についても…
幸男さんは途中で口を挟む事なく、黙って聞いてくれた。
刹那、拳を強く握りしめる仕草があり、話し終えると幸男さんは小さく深呼吸して私に『聖知のスマホ貸してくれ』と手を差し出した。