第60章 葛藤
「悪い、疑ったわけじゃねえんだ…ただ…俺の知らない聖知を氷室が知っているかと思うと…」
「幸男さん…」
辰也君に嫉妬したっていう事と何か違う。
それ以外に何か、幸男さんの心の中でひっかかることがあるような感じがした。
「幸男さん…どうして……辰也君と何かあったんですか…」
「………」
「そういえば、女医さんが喧嘩がどうかって…言ってましたけど…何か関係があるんですか…?」
言い終わらない内にギュッとさらに幸男さんに抱きしめられる。私の問いかけに何も答えないまましばらく経つとゆっくり深呼吸をして離してくれた。
「氷室にはっきり言われた。邪魔者だってな…アイツは……聖知…お前に惚れてんだよ。」
「…………」
「だから…俺の知らない聖知をアイツが知ってるかと思うと…上手く言えねえけど…負けたくねえ…そう思った…」
「幸男さん……」
子供の頃にはわからなかった事…
今ではわかる事がある
あの時の向日葵の花言葉…
辰也君があの時何を伝えようとしてたのか…
明確にはわからないけど…
1つだけ確かな事があった
辰也君がくれた花束の中に向日葵は3本あった
向日葵は本数で意味合いが変わる
1本は「一目惚れ」
3本は…
「愛の告白」
辰也君が私に好意を抱いてたって事を知った
そして…今もその想いは続いてるって事も…