第60章 葛藤
—笠松side—
氷室と聖知の関係性がわからねえ
俺にわかるのは7年ぶりに再会したということ
氷室が聖知の事を好きな事
氷室の事を思い出して聖知が泣いた事
聖知は氷室のことを覚えていないと言った
でも、思い出しただけで泣くってことは…
久しぶりに会えた嬉しさで感動したってことか…?
それとも… 聖知も氷室の事を好きで…
その事を思い出して泣いたって事か…
頭の中で考えてもグルグル憶測だけが巡り氷室が出て行ってからずっと聖知を抱きしめていた。
「あの…ゆッ…」
「……アイツが好き…だったのか?」
今1番知りたい疑問を聖知にぶつけた。
完全に氷室に嫉妬していた。
俺が氷室に詰め寄った時も聖知は氷室を庇った。
ただ単に止めただけだって…頭ではわかっていても止まらなかった。
2人の関係性が特別な物に思えて…今こんな事で言い争うべきじゃねえのに…嫉妬心で聞きたいことばかりが口に出て止まらなかった。
ふと俺の名を強く呼ぶ声に我に返り聖知を見ると悲しげな表情を浮かべていた。
「幸男さん…ごめんなさい…不安にさせてしまって…ちゃんと辰也君の事は話します。だから…そんな顔しないで下さい。」
今にも泣きそうな表情で俺の服を掴み訴えかけるその仕草に自分の発した言葉を後悔した。
聖知の口から何も聞いてねえのに…
一方的に決めつけて…
嫉妬して…
「…私の事…信用できないですか……」
何も言わない俺にさらに不安を感じたのか…消え入りそうな声で今にも泣きそうな顔で服を掴んでる手が震えていた。
俺は何考えてんだ…
ただでさえ、聖知は傷ついてんのに…
情けねえ…
聖知の気持ちを疑うなんて…