第60章 葛藤
—氷室side—
聖知ちゃんと別れてから、敦に怒られるのを承知の上でストバスのイベント会場へ向かった。
案の定、敦は不機嫌MAXで狂ったようにポッキーを頬張っている。
ストバスの試合結果は優勝
俺がいない代わりに誰かが代役を立てて出場してくれたらしい。
「室ちん…ホント、試合終わってから戻ってくるとか勘弁してよ。そもそも室ちんが出たいって言うから〜」
「悪かったって…ほら、だからお詫びのお菓子も敦に買ってきただろ?」
「………食う…」
戻る途中のコンビニでお菓子を買ってきて良かったと内心思っていると敦は袋を受け取り立ち上がった。
「で… 聖知っちんには会えたの?」
「……なんだ…知ってたのか、敦…」
「試合放り出してまで室ちんがどっか行く理由、聖知っちん以外今は考えられないし…」
「あぁ…会えたよ、聖知ちゃんに…」
「ふーん…なら、良かったね〜」
「いや…あんまり良くはないかな…想定はしていたけど、聖知ちゃんには恋人がいたから…」
「え…じゃあ、室ちん失恋したの?かわいそ〜」
「何でそうなるのかな…」
これだけ月日が経っていれば…もちろん聖知ちゃんに想い人がいるのは覚悟はしていた。
聖知ちゃんと笠松さんがどれくらい付き合っているのかは知らない。
そんなのはどうだっていい。
誰と付き合っていても構わない。
聖知ちゃんは運命の人…
俺は諦める気など毛頭なかった。
「ていうか〜なんか意外だね」
「…何が?」
「いや、聖知っちんに恋人がいるとか…中学の頃よく告白されているのは見かけていたけど、ずっと断ってたし」
「へぇ…そうか…なら、高校から付き合っている可能性が高いと言う事だね。」
正直に言うと聖知ちゃんがなぜ花宮という男に襲われていたのか…気になったけど、内容がデリケートな分聞くことができなかった。
おそらく笠松さんは知っている。
彼と会話して匂わすような発言がいくつか露見していたの思い出し俺は拳を握りしめた。
男の1人として絶対に笠松さんには負けない。
そう心に誓いながら歩いていると敦の視線が痛く刺さる。