第60章 葛藤
「…………」
「聖知…ちゃん…?」
全部思い出した
何で忘れていたんだろう
初めてアメリカでできた大切な友達だったのに
辛い想い出に蓋をして考えないようにしていたのかもしれない
記憶を呼び覚ますように楽しかったと想い出と辛かった想い出が同時に頭の中で巡り自分でも気づかないうちに涙が溢れて止まらなかった。
「おい、聖知に何言った!?」
「大きい声を出さないでください。」
「何もねえのに聖知がこんなに泣くわけねえだろ」
「ッ…ごめんなさい…違うんです…私、思い出して…」
ずっと泣いていると心配させてしまう。
涙を指で拭い、幸男さんが辰也君に掴み掛かろうとしているのを止め思い出した事を話すと急に辰也君に抱きしめられた。
「なッ…!?」
「ッえ…ちょ…た…辰也君!?」
「良かった… 聖知ちゃんが思い出してくれて…俺は片時も忘れたことはなかったよ」
「あの…えと…辰也君…」
ギュッと抱きしめられて自力で抜け出そうと思っても力が強くて抜け出せず、ふと辰也君のホッとしたような表情を見るとずっと『心配してくれてたんだ』と思うと申し訳ない気持ちに駆られる。