第59章 夏の陽だまりに咲く初恋
「ぅッ…うッ……ッ…」
「桐生、入りなさい」
「はい」
「この事態の説明をしなさい…話によっては貴方にも責任をとってもらうからそのつもりで」
お祖母様の気が済むと教鞭をサイドテーブルに置き、泣いてる私をギロリと冷たい眼で睨みつける。
泣いたらいけないとわかっていても…打たれた箇所が赤くなり痛くて涙が止まらなかった。
何で時間が遅れたのかわかない
今まで遅れたことなんてない
何かの間違いに決まっている
そう思っても現実は変わらなくて…桐生が何を話すのか、不安な気持ちを抱えながら耳を傾けた。
「僭越ながら……今回、このような事が起きた要因といたしましては全て、お嬢様の意向が発端になります。」
「ッ…!」
「……どういうことか説明なさい」
「いつもの散歩の時間…お嬢様はある日、男の子2人とお知り合いになり…毎日遊ぶ約束をされていました。私は止めましたがお嬢様は耳を貸さず…『自分で時間を管理する』という約束で今まで許していました。ですが…その結果このような事態を招いてしまい…大変申し訳ございません」
「…そう……で…私に報告がないのはなぜかしら」
桐生の言葉に身体がカタカタと震えてくる。
お祖母様は絶対に私を許してくれない。
直感でそう感じた。
お祖母様の声色がいつもより低くなり、机にあった万年筆を手に取りその場でへし折る様を見せる。
嘘をついても確実にバレる
桐生はなんていうのか…
考えてもわからず…桐生の言葉をを待っていると信じられないことを口走った。
「…お嬢様が…紅羽様には絶対に言うなと…そう命令を受けましたので…報告すべき事案ではありましたが…」
「な…私ッ…そんな事言ってなッ…」
桐生の言葉を否定するように弁解しようとするとお祖母様に再び頬を強く打たれる。あまりにも痛くて絨毯へとへたり込んでしまい身体がうまく動かなかった。