第59章 夏の陽だまりに咲く初恋
それから私は毎日ストバスに通った。
最初は桐生に反対され、散歩コースを変えられそうになったけど条件付きで通う事を許してもらった。
①服を汚さない
②自分で時間を管理すること
③勉強を今よりも頑張ること
辛い勉強生活の中に楽しみができて、勉強の間違いも少しづつ減り、お祖母様に叱責されることも少なく無くなっていた。
* * *
「あ、聖知ちゃん!」
「お…聖知!」
「辰也君、大我君…?何してるの…?」
「な…なんでもねえよ…なぁ、辰也…」
「……大我…なんで赤くなってるんだよ…」
毎日ココに通うようになって、最初は謝ってばかりだった私も2人にだんだんと打ち解けていった。
屋敷にいる時は相変わらず厳しい状態だけど…ココに来てから辰也君や大我君から色んな話を聞いて自然と笑う事ができている自分を見て『まだ笑えたんだ』と改めて実感した。
いつものようにストバスに行くと大我君は私に見えないように何かを隠した。ほんのり顔が赤くなっていて辰也君も大我君と私には聞こえない小声で何か喋っている。
「どうかしたの…?」
「聖知ちゃん、実は今日渡したいものがあるんだ。」
「…なに…?」
「目つぶってくれる?」
「う…うん…」
辰也君に言われるまま目を瞑るとナイロンのようなクシャッとつぶした音が聞こえる。
辰也君の『いいよ』という掛け声でゆっくり瞼を開けると、花の香りと同時に向日葵の花が目の前に広がっていた。