第59章 夏の陽だまりに咲く初恋
「残念ですが…そのような時間は…」
「まだ、時間はある…あと20分…
今は自由な時間なんでしょ…」
「「お願いしますッ…!」」
氷室君の言葉に続けるように再び桐生を説得しようと服の裾を引っ張りお願いをした。
許してもらえるかなんてわからない。
私の言葉を後押しするように、氷室君と火神君は深々とお辞儀をするのを見て私も桐生に頭を下げた。
「……はぁ……15分です。それ以上は待てません。
それから…私はどうなっても知りませんよ。」
桐生は背広のポケットから懐中時計を取り出すとストリートバスケのコートから離れていく。
「やった!」
「とりあえず、早くやろうぜ!」
「う、うん…あの…ありがとう。一緒に頭を下げてくれて…」
「は?何言ってんだよ。」
「え…あ、ごめ…」
桐生が離れたのを見て氷室君達が駆け寄ってきてくれた。改めてお礼を伝えると、火神君が眉毛を吊り上げ睨んでいるように見えて自然と謝ろうと顔を俯かせた。
「友達なんだから…当たり前じゃん」
「と…友…達?」
「そうだよ、えっと聖知ちゃん…だったよね?これからよろしくね。」
火神君はニカっと笑い、氷室君も優しく笑いかけてくれるのを見て再び胸が暖かくなる。
アメリカに来てからの最初の友達
まだ、バスケットボールに少ししか触れたことがない私に、ルールやドリブルなど基礎的なことをたくさん教えてもらい、わずか15分という短い時間だったけど心から楽しい時間を久しぶりに過ごすことができた。