第59章 夏の陽だまりに咲く初恋
「わ…悪かったな…」
「……ぇ…?」
「だ、だから…昨日は…そのキツく言いすぎた…別に見るのがダメじゃなくて…せっかく此処に来たんだからもっと近くで見れば…つーか…来たんなら一緒にバスケやろうぜ」
「ごめんね…大我は少し不器用なんだ、でも悪い奴じゃないから安心して?」
赤い髪の男の子は頬を少し赤くしながら途切れ途切れに言葉を繋げ謝ってくれた。さっきまで怖かった印象が嘘のように変わっていく。
「俺、氷室辰也。名前教えてくれる?」
「……水瀬聖知。」
「俺、火神大我!よろしくな!」
改めて自己紹介を終え、ストリートバスケのエリアに踏み入ろうとすると腕を強い力で掴まれる。
「いけません、お嬢様。お召し物が汚れますし、貴女にそんな時間はありません。」
「で…でも…まだ時間は…」
「…私の言うことが聞けないのですか?」
「………」
桐生の冷たい鋭いに目つきにそれ以上何も言うことができず、目を伏せ桐生に引っ張られるまま踵を返して去ろうとすると今度は氷室君が私の腕を引っ張る。
「待ってください。」
「……なんですか…ボウヤたち…」
「誰がボウヤだよ…おっさん…」
「おっさん……?」
「こら…大我…服を汚さなければいいんですよね?なら汚しません!」
「これからお嬢様は予定があるので一緒に遊べないのです。」
「予定…じゃあ、いつなら…」
おっさんと呼ばれて桐生は苛ついた表情を浮かべる。
氷室君が懸命に桐生を説得する姿を見て胸の内がなぜか暖かくなった。