第59章 夏の陽だまりに咲く初恋
––氷室side—
「ほら…大我があんな言い方するから…」
「えッ…お…オレのせい…?俺は…その危ないから…見るんならもっと近くで見ればいいって…そう伝えたくて…」
「いや…多分、伝わってないと思うけど…」
大我の投げたボールが偶然ストバスの試合を見ていた女の子の顔面に直撃してしまいその女の子は気絶してしまった。
しばらくして目が覚めて安心したと思ったら…その子は急に顔色が真っ青になり時間を気にしていた。
打ちどころが悪かったのかと心配したけど、すぐに一緒に来た大人の人と一緒に帰っていってしまった。
「ここら辺に住んでいる子なのかな」
「さぁ…あんま見かけねえけど…なんかヒラヒラした服着てたな…あれじゃあ…バスケできねえじゃん」
「…名前聞き損ねちゃったね…また来てくれるといいけど」
大我の言う通り、俺もあの女の子を見かけたことはなかった。
ストバスの観戦に来たのなら、動きやすい服装で来る人がほとんどだったけど、彼女は紺色と白のフリルがついたワンピース姿だった。
ここら辺ではあまり見ない独特な服装に違和感を感じつつも俺は自分でも知らないうちに初めて会った彼女に惹かれていた。
彼女が目を覚ました時に見た吸い込まれそうなほど綺麗な青い瞳
長くて綺麗な黒髪に、少し憂いに沈んだ表情…
ほんの数分の出来事だったのに彼女の仕草一つ一つに
胸が高鳴り、彼女がストバスを去るまでずっと後ろ姿を見つめていた。