第58章 初恋の再会
––聖知side—
女医さんの怒鳴り声からシン…と室内に静寂が訪れ、少し経つと女医さんだけ救護室に戻ってきた。
「あの…何かあったんですか?」
「いえいえ…何も心配する事はありませんので…ゆっくり横になっていてくださいね。お2人に少し事情を説明してきますのでもう少々お待ちください。」
先ほどの怒鳴り声を発していた張本人とは思えないくらい優しく微笑んでバインダーを片手に持つと女医さんは再び外に出ていってしまった。
外では微かに女医さんの怒る声が聞こえるだけで誰と話をしているのかわからない。
1人になると嫌なことばかり考えてしまう
こんな事になるなら…公園に来なければ良かった
幸男さんの家で約束の時間まで待っていれば…
たくさんの人に迷惑をかけることもなかった
そもそも…花宮の狙いは私で…
どんどん行動がエスカレートしていってる
このままじゃ一緒にいる幸男さんや他の人に…いつか取り返しのない大怪我をさせてしまう…
不安や後悔など嫌なことばかりが頭の中を巡る。
そんな私の思考を止めるように救護室の扉が開き誰かが入ってきた。
「聖知…」
「ッ…幸男さん…」
「……さっきはびっくりさせたよな…悪い…気分は……」
「ッ……」
改めて幸男さんを見ると服が泥だらけで…花宮が見せてきた動画を思い出した。きっと私の想像がつかないくらい大変な思いをして…私を探して駆け付けてきてくれたんだと思うと涙が止まらなかった。
救護室の布団をギュッと握りしめながら、ポロポロ涙が溢れる。幸男さんの問いかけに何も返事ができずにいると幸男さんは黙ったまま近くの椅子に座り何も言わず抱きしめてくれた。