第58章 初恋の再会
––救護室—
「特に外傷もありませんので…すぐ目を覚まされるかと思います。大丈夫ですので安心してください。」
なかなか目覚めない聖知に対し、医者は容態を見て付き添いの笠松と氷室を安心させるように微笑みながら伝えた。
「良かった…」
「とりあえずは一安心ですね。」
医者の言葉に笠松と氷室は胸を撫で下ろし、目を覚ましたら教えてくれるという事で他の患者もいるため、救護室から一旦出て外で待つことにした。
「……聖知の事助けてくれてありがとな……俺は笠松幸男だ。名前教えてくれるか?」
「………氷室辰也です。」
「感謝はするが…なぜさっきあんな事した…」
「あんな事とは…?」
救護室に連れてくる直前、氷室が聖知の髪に軽く口付けしていた事に対し心が乱され、聖知の安否が優先のためその場で追求したい衝動を笠松は抑えていた。
本人に追求しても見られてないと思っているのかニッコリ微笑むだけでシラを切られて笠松は不機嫌そうに拳を握りしめる。
「さっき聖知の髪に…」
「あぁ…早く彼女が良くなるようにと思って…アメリカでは挨拶みたいなものなんですが…」
「…アメリカ……そうか…わかった…とにかく助かった…後は俺が聖知の事…」
「随分と聖知ちゃんと親しいんですね。
氷室はクスッと笠松を挑発するように微笑む。
そんな氷室の言い分に納得はしていなかったが聖知が目覚めるまでは冷静にいようと考え氷室との会話を切り上げようとした。