第58章 初恋の再会
「ッ……」
「…花宮…?」
花宮の顔つきが変わった。
余裕の笑みは消え冷汗が流れ…再度交互に笠松と氷室に視線を映し不可解な表情を浮かべている。
決して笠松や氷室の気迫に圧倒されているわけではない。何か、違う何かにたじろぐ花宮の姿に原も異変に勘付いた。
「…………行くぞ…」
「……え…?ちょ…花宮…帰んの?」
花宮は小さく息を吐くと踵を返しその場から立ち去ろうとした。立ち去る直前笠松の方へ振り返り眉間に皺を寄せ鋭く睨む。
「………これで勝ったって勘違いすんなよ…次は必ず潰す」
「…………」
花宮が急に去っていくのに対し、何か企みがあるのか笠松は勘繰るが、すんなり帰っていく2人を見て安堵のため息を吐く。
「………ッ…」
「聖知ッ…⁉︎」
「聖知ちゃんッ…!」
花宮が消えて張り詰めた空気がなくなり緊張の糸が切れ、聖知は足腰に力が入らなくなりその場に崩れるようにへたり込んで気を失った。
顔色も悪く、今すぐ動けない状態の聖知に笠松が抱き上げようとすると氷室が一足先に聖知を軽々と抱き上げた。
「ッ…なッ…お前ッ…何すッ…!」
「それよりも…今は彼女を介抱する方が先です。着いてきて下さい。」
冷め切った表情で笠松にそう告げるとイベントエリアのバスケコートに併設してある救護室まで聖知を急いで運んだ。
向かう最中、直ぐに目を覚まさない聖知の様子を何度も見ては繰り返し、不安げな表情を浮かべ早く目を覚ますようにと聖知の髪に軽く口付けた。