第58章 初恋の再会
「どうだ……敦…」
「………やっぱ…これ、せっちんじゃん。」
「…… せっちん…?」
「確か今は黄瀬ちんと同じとこ…」
幼くても共に3年間過ごしてきた仲間…
どことなく面影が残っており、ふと、中学の頃を紫原は思い出した。
休み時間や部活が終わってから、お菓子をくれたり、勉強を教えてくれた思い出がよぎる。
納得して氷室にロケットを返そうとすると、紫原の手を氷室はロケットごと強く掴んだ。
「敦っ…!っ…彼女…聖知ちゃんの事教えてくれないかっ!」
「え〜めんどくさい…それに室ちんは覚えててもせっちんが覚えてなかったらどうすんの?」
「俺はそれでも構わない、敦…教えてくれないか?」
「でも、せっちんに聞いてみないと〜」
なかなか聖知の事を教えてくれない紫原に氷室は少し考え込む。
そして、ある提案を持ちかけた。
「敦、彼女の事…教えてくれたらアメリカ限定の非売品のお菓子をあげるよ。今じゃ入手不可で…プレミアがついてるくらいなんだが…」
「………言っとくけどさぁ〜お菓子に釣られたとかじゃ、ないからね。」
「わかってるよ…ありがとう…敦…」
『プレミア』というキーワードに紫原は目を輝かせ、脳内で聖知とお菓子が天秤にかけられている様を思い描く。
お菓子の誘惑に勝てるはずもなく、氷室にスマホにある帝光時代の写真を見せ、聖知の事を語り始めた。