第58章 初恋の再会
「でも、どうやってわかるわけ?写真だけじゃ再会しても分かりようが無いじゃん。」
「もちろん、写真だけじゃないよ。俺が知っているのは、名前と同い年で…いつも燕尾服を来た人が近くにいたから…きっと家が富裕層な家庭なんだと思う。」
「ふーん…名前なんて言うの?」
「聖知ちゃんって名前だよ。」
氷室は目を瞑り過去を思い出すように話すと、紫原はふと名前を尋ねる。
クールでバスケ以外にあまり執着しない氷室が、大切に想っている女の子がどれほどの子なのか気になったのか、興味本心で聞いたのかはわからない。
氷室の口から女の子の名前を聞くと、紫原は少し驚きうまい棒を頬張るのを止めた。
「…………ねえ、その子の写真見してくんない?」
「敦…?さっきまで興味なさそうだったじゃないか…急にどうした?」
「んーちょっと確かめたい事ができたって言うか〜」
「…まさかっ…聖知ちゃんを知ってるのか!?」
「さぁ……それは見てみないとわかんないし。」
否定的だった紫原の態度が急に変わり、氷室は怪訝な表情を浮かべ一つの確信に辿り着く。
聖知が姿を消してから何も手がかり見つけられなかった。
ストバスまで徒歩で来ていた事を考えて近くに住んでいると思い周辺を探してみたが再び会うことも叶わなかった。
間違ってても構わない…
彼女に繋がる情報なら些細なことでも聞きたい
聖知ちゃんに再び会えるなら…俺は…
氷室は気持ちが掻き立てられるように、急いで首にかけていたロケットを紫原に渡した。