第58章 初恋の再会
「今日の14時に、笠松先輩と屋敷に行くから…
…時間を空けといて。」
「…かしこまりました。
お気をつけてお越しください。」
いつものように用件だけの電話。
いつもと変わらないはずなのに…
今、この時だけは重々しく感じ、用件だけ伝えると電話を切った。
「連絡…できたか?」
「あ、はい…14時に行くって言いました。」
「じゃあ…少し早えけど…でっ…出かけるか…」
「でも…まだ時間に余裕があるので…」
リビングの時計を見ると、まだ11時前で約束の時間にはまだ早い。言い終わらないうちに幸男さんに手を引かれると、玄関で背を向けたまま急に立ち止まる。
「だから…っ…と…遠くとか…行けねえけど…
近場でどっか…2人で…行けるだろっ…」
「…じゃあ…公園に行きたいです。」
「公園って…いつも通学路で通るとこだろ…?
他に…」
「幸男さんと一緒なら…どんな所でもきっと楽しいです。」
私があまり緊張しないように、幸男さんは和ませようとしているのがわかり、繋がれた手をぎゅっと握り返した。
いつも通っている公園でも、幸男さんと一緒ならどんな所でも特別に感じられる。
そう伝えると振り向いた幸男さんの顔は赤くなっており、それに釣られるように自分の顔も熱くなるのを感じた。
幸男さんと家を出て、手を繋ぎ、近場の公園へと早速出かけた。
この時…自分の記憶からも忘れていた…
ある人物と再会する事になるとは夢にも思わなかった。