第58章 初恋の再会
顔を逸らしたままどこか様子のおかしい幸男さんが気になってはいたものの、今日訪問することを桐生に伝えていなかったのを思い出し、廊下で電話しようと立ち上がった。
「ど…どこ行くんだよっ…!」
「えっ…あの…今日行く事桐生に連絡してなかったので…」
「で…電話ならっ…別に…ここですればいいだろっ…」
「えっ…はい…じゃあ少し電話しますね。」
「お…おう…」
立ち上がると同時に幸男さんに手を握られ引き止められる。幸男さんの言葉に再び座り直し、幸男さんと目が合うとまた目を逸らされそっぽを向かれる。
「……幸男さん…さっきからどうしたんですか。」
電話をかけようと思った矢先、様子がやはり気になりスマホを閉じて背を向けた状態の幸男さんに話しかけた。
「な…何でもねえよっ…」
「何でもないなら、何でこっち向いて話してくれないんですか?」
「か…会話はしてるだろっ…」
「……私と面して会話するのが…嫌…ですか?」
「ち…ちげえーよっ!
その…だな…」
頑なに私を見てくれない幸男さんに不安が募る。
怒っている様子もなく、ただ見てくれないだけなのに…それだけで胸が締め付けられるのを感じた。
思わず気持ちを言葉に出してしまうと焦ったような表情をした幸男さんがやっと振り向いてくれた。
それでも…顔がトマトのように赤くなった表情でを再び目が合うと視線をそらされる。