第57章 温もり
「お…おう…それも話したかった事だけどよ…その前に…俺…いい間違ったっていうか…言ってないっていうか…」
「………?」
「さ…さっき…母さんが言ってただろ…」
「るみさんが…?」
「っ……」
「えっと……何をですか…?」
笠松はうまく言葉が出てこず、内容が伝わりにくい言い方だとわかってはいても、口にするのは恥ずかしく聖知に察してほしくてもう一度聞いても聖知はわからず苦笑いを浮かべる。
「っ……かっ…可愛いって…」
「……可愛い…?」
「母さんが聖知に言ってただろっ…淡い色が似合うって…その後、母さんが俺にも…その…聖知の事…可愛いかって聞いた時…」
言いながら、みるみる笠松の顔が赤く染まっていく。
『可愛い』って3文字を言うだけで体温が上がっていく様を感じ照れた顔を隠すように視線を逸らしながら笠松は言葉を続ける。
「『そんなことより』って言っただろ…俺…」
「………えっと……つまり…幸男さんは何を気にしてるんですか…?」
「こ…ここまで言えばわかるだろっ…!…まるで俺が……聖知の事どうでもいいような言い方しちまったって…傷つけたんじゃないかと…思って…」
聖知は、笠松が笠松の母親から責められていた事を思い出した。
笠松に似合っていると言われた時点で幸せな気持ちで満ちていたので、『可愛い』って言われなくても気にしていなく、むしろ、顔を赤らめながら謝る笠松を見て、フフッと笑むと同時に温かくて好きな気持ちが溢れてくる。