第57章 温もり
「わかった…今日は幸大たちと寝る。その代わり…聖知にあんま変な事言うなよっ…聖知…なんかあったらすぐ呼べよ?」
「まぁ、女は女同士、男は男同士の方がいいじゃない。聖知ちゃん、実はね…今日聖知ちゃんに着てほしい服があって…」
「だからっ…そういうとこなんだよっ…聖知は着せ替え人形じゃねえんだからなっ…!」
幸男さんはため息をつき、自分の部屋に上がろうとリビングを出ようとすると、るみさんの言葉に眉がピクと動く。
すぐにるみさんの暴走を止めるために、話に割り込もうとすると、るみさんは不敵な笑みを浮かべて紙袋から服を取り出した。
「「っ…!!」」
「うふふ♡実は今、新しいブランドを立ち上げようと思ってて…コンセプトはお嬢様風フェミニンファッションブランド『Classical Rose』」
るみさんが取り出した服はレースを豊富に使用し、繊細な刺繍が惜しげもなく施され、白シフォンの大きめのリボンが特徴的なタンポポ色のワンピース。
アメリカにいた時は似たような服を着ていた事はあったけど、今ではカジュアルな服の方が自分にはあっていると思い屋敷を出てからは着た事がないデザインだった。
「聖知ちゃん、明日これ着てデートへ行ってらっしゃい。」
「む…無理ですっ…私には…似合…」
「……っ…そんな…せっかく聖知ちゃんをイメージして…デザイン考えるのに3週間もかかって…」
「……っ…」
るみさんに紙袋ごと服を渡されると、とても今さら着るのに躊躇するデザインで断ろうとすると、るみさんは今にも泣きそうな表情で涙ぐむ。
瞳をウルウルさせて泣きそうなるみさんの姿に何も言えず、どうしようか迷っていると後ろから幸男さんに声を掛けられる。